1.まえがき
本判例研究は、法人が脱税工作のために支払った手数料を損金に算入できるか否かを最高裁まで争われた判例(最高裁平成6年9月16日判決)をふまえ、違法な支出の損金性を検討するものである。
2.事実の概要
(1)相関関係
①X(被告人株式会社)
不動産売買等を目的とする会社
②A(個人)
Xの代表取締役の知人
(2)事件内容
①株式会社Xの代表取締役が、知人Aの協力を得て、架空の請求書を作成し、法人税の納付額を不当に減少させた。
②株式会社Xは、本件の手数料として知人Aに手数料1900万円を支払い、損金の額に算入した。

(3)判決
①第一審(東京地判)
当該支出は、法人税法22条3項の損金に該当しないと捉え、Xの主張を否定。
②原審(東京高判)
当該支出は、法人税法22条3項、4項、および法人税法の立法主旨を考慮すると、損金に該当しないとして、Xの主張を否定。
③最高裁
当該支出を経費として処理することは、法人税法22条4項における公正処理基準に従っていないとし、したがって、当該支出は損金に該当しないとして、Xの主張を否定。
3.意見
(1)本判決について
当該支出が、損金の額に算入しないことは、課税の公平性を求めている法人税法の立法主旨からも明らかであるため、異論はない。
しかし、最高裁において、そのことには触れずに、判決を下したことは、意外である。なぜならば、法人税法の立法主旨からすれば、明らかに損金の額に算入すべき事案でない本件について、あえて、様々な解釈の余地がある法人税法22条4項のみを根拠としたことの理由が理解できないためである。
(2)違法な所得を得るために要した支出について
本件は、法人税法そのものの立法主旨に反する違法行為であったため、そのための支出が損金の額に算入されないことには、疑問はない。
しかし、民法などのその他の法律においては、取り扱いが異なると思う。なぜならば、違法行為で得た所得であっても、課税されている以上、そのために支出した費用は、損金の額に算入することが公正妥当と認められる処理であると考えられる。
また、その支出を損金の額に算入することで違法行為を助長してしまうのではないかという意見もあるかもしれないが、違法行為で得た収入は、通常であれば、被害者へ返還されると思われる。その返還義務が確定したときに、納税者は、更正の請求等によって、国に納税額の還付等を求めることとなるため、当該損金の額の算入も取り消されることになる。さらに、「①損金の額に算入された経費等は、その受け手側で課税されるため、その支出に対して完全に課税されないわけではない」し、「②経費の計上によって、その違法行為の全体像が把握しやすくなる」ため、違法な所得を得るために要した支出が損金の額に算入されるとしても、原則として、そのことに異論はない。
以上

