弁護士夫婦事件

1.事実の概要
 ① 原告Xとその妻Aは、共に弁護士として、それぞれ別の住所地で事業を営んでいた。
 ② 原告Xは、妻Aへ仕事を依頼し、その対価を支払っていた。
 ③ 原告Xは、妻Aへの支払い対価を事業所得の計算上、必要経費に算入した。
 ④ 結果、原告Xは、被告Y税務署長にから、所得税法56条を根拠に当該経費を否認され、更正処分および過小申告加算税賦課決定処分を受けた。
 ⑤ 本処分につき、原告Xは、憲法14条1項に違反するとして提訴。

2.判旨
 ① 第一審、請求を棄却。
 ② 控訴審、控訴を棄却。
 ③ 上告審、上告を棄却。
  (i) 所得税法56条は、納税者間における税負担の不均衡を防止する目的で定められている。
  (ii) 一方、法人組織で事業を営む者(法人では、一定額の役員給与の損金算入が一定の要件のもと認められている)との間における税負担の不均衡を防止する目的で、特例的に所得税法57条が定められているため、事前の承認を得ていれば、一定額の経費算入が認められている。
  (iii) 原告Xの処理は、所得税法56条に反し、かつ税負担の公平を保つ目的で定められた57条の適用要件も満たしていないため、認められない。

3.解説
 ① 所得税の課税単位は、個人単位主義が原則。
 ② 所得の分割による租税回避を防止するため、生計一親族は、まとめて所得計算(56条。ただし、57条による特例あり)。
 ③ 上記②(56条)については、以下の2つの考え方がある。
  (i) 生計一親族への支払対価に係る所得計算、どのような場合であれ、適用される。
  (ii) 生計一親族が従属的な役務提供をしている場合のみ、適用される。
 ④ 上記③(ⅱ)は、同事件の控訴審・上告審で否定されている。
 ⑤ 56条は、当初、生計一親族が従属的な役務提供をしている場合のみを想定して定められたものと考えられる。そのため、批判もある。
 ⑥ ただし、56条が著しく不合理であることが明らかでない限り、憲法14条1項に違反するとは言い難いと思われる。

4.感想
 ① 理想としては、事業所得の計算上、収入を得るために必要な経費であれば、必要経費に算入されるべきであると考えられる。
  (i) すなわち、対価性が認められる金額であれば、必要経費として認められるべき。
  (ii) しかし、対価性を立証するためには、帳簿等の管理が不可欠であるため、青色承認を受けていることが前提である所得税法57条1項は、妥当であると考えられる。また、対価性の立証義務が生じるのは、密接な関係にある者間での所得の付け替えが疑われるため。したがって、従属的な役務提供であるか否かは問題ではない。
  (iii) 青色承認を受けていなくとも、妥当とみなせる一定金額を認める所得税法57条3項も妥当であると考えられる。
  (iv) 青色承認が事前承認でなければならないことについて、少し疑問がある。(もしかしたら、偶然に、それらしき資料が揃ったために、不備のあるまま青色申告者が続出することを防ぐためかもしれない。また、少なくとも、法人も事前承認が要件なので、法人・個人間の公平性の観点では問題ない。)

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